「COLAL」はヴァナキュラーを強く意識した内発的クリエーションの発生を狙うプロダクトである。
沖縄では戦後のアメリカ占領下での復興過程において鉄筋コンクリートを用いた建築が普及した。その中でも透かしブロックを「花ブロック」と呼び、好んで用いてきた歴史がある。強い日差しの遮光と適度な採光、高温多湿な気候に必要な通風、台風による飛来物を遮断するといったとても合理的な素材であり、単一形状によって生み出されるパターンは平面的な装飾としての役割も果たす。風土に適応する為の手段はやがて建築の意匠性へ大きく影響を与え、ローカルに根付く文化の一つとなっている。
沖縄北部名護市にイベントや観光の中継地点として機能し、ローカルと共に成長していこうとしている実験的で多目的なコミュニティースペース「COCONOVA」がある。過去に診療所だった空間はすでに解体され巨大なスケルトンとなっており、クリエイションによる可能性を多分に含んでいた。彼らの目的は多岐渡るが、外資による開発で疲弊した沖縄で新たな事業を行う事に対してかなり慎重な様子で、よりローカルに特化した活動を目指している。今回私はヴァナキュラー家具の制作を依頼されていた。沖縄に理解を示しながら新たな価値を生み出す。そこで町の景観として馴染み、現地人の意識下で透明となった花ブロックに光を当て、新たな活用方法と可能性を提案をすることにした。
沖縄の花ブロックの多くは沖縄産のコンクリートを使用しており沖縄で生産されている地産地消のプロダクトである。パターンは100種類を優に超え、ただの建材には留まらず、建築が纏う幾何学的で連続性のある軽やかなテキスタイルのようだ。今回、私は単体で見た花ブロックのマッスにとても魅力を感じ、従来の集合体としての平面的な視点ではなく、モノ単体の立体的な花ブロックに注目することにした。特徴として花ブロックは規格の厚みが100㎜で透かしの部分にも同じだけの深さがあり、側面に鉄筋を入れる溝が施されている事が挙げられる。そこで、平面的にデザインされたブロックを斜めに切断することで、溝や透かし部分に無作為で複雑な断面形状を与える事にした。また、花ブロックの種類の多さと規格サイズという工業的特徴が様々な展開を可能にしている。切り出された物体は花ブロックが本来持っていたマッスをより強調し、オブジェクトとして 機能し始める。
私はある願いを込めて「COLAL」という名前を付けた。これは珊瑚を意味するCORALをLOCAL のアナグラムにした造語である。珊瑚は沖縄を象徴するキーワードであり、海の多様性の役割を担う重要なアイコンである。褐虫藻と相利共生の道を選んだ珊瑚の生存戦略は、多くの生命を巻き込み互いに影響を与え合う環境を生み出すようにできている。「COLAL」はローカルの言語を用いた新たなクリエーションであり、地元で簡単に制作できるようなプロセスで構成されている。モノと人間の共生関係を環境の目線から眺める事で、昨今のものづくりに付きまとう固有性や執着心を捨て去り、地元の人が触発され様々な拡張が生まれる事を見通している。創造は静かにゆっくりと生態系を構成し、「COCONOVA」に活着した「COLAL」はホロビオント形成のパートナーを探し始めている。