風の目たち
The eyes of the wind / 風の目たち Vol.1 A
逆紡錘
本企画に誘ってもらった時に窓[window]の語源が面白いという話が出た。英語のwindowは、古代北欧語vindaugaに由来し、展示会のタイトルである「風の目」を意味する。風や光の通り道(穴)であり外を見るための開口(穴)である窓は、内から外を外から内を知覚する機能があり、身体に備わった穴(目)のように考えられていた。壁が持つ断絶とは違う、断続的なパブリックとプライベートの往来が可能な隔たりなのである。確かに人に目をじっと見つめられていると、どこか内が透かされているように感じる。であるなら街の窓に目を向け直した時、そこには内と接続する何か手がかりが存在するのかもしれない。
紡錘とは不揃いな繊維を撚り束ねる事で均一で太く強い糸を紡ぐ為の道具である。限られた素材の中で新たな役割を果たす物質が道具を介して生まれていく。しかしながら束ねられた繊維一本一本は大局に溶けてしまったわけではなく依然として存在し、更にその繊維一本を見ても小さな物質の集合であることを私たちは知っている。人間は個という存在を社会等の概念を紡錘として用い集団化することでそれぞれの役割を得ている。集団は個では到底なし得ないような力を発揮するが、どこまでいっても個が集団であり、集団もまたどこまでいっても個に変わりはないのである。
「逆紡錘」は内部に存在する見えない量を引き出していくだけの道具である。引き出された糸は戻ることはなくモノとの関係の形跡として残り、オブジェクト周りの空間を変化させていく。窓辺に飾られることを前提とし、能動的に引き出されてゆく十分な長さの糸の様子から、内にいた人(個)をだんだん外へ透かしていってしまう。そして街という集団を解すように、「逆紡錘」はとある窓際でひっそりとパブリックとプライベートを隔てる物質的な関わりを通り抜ける風となる。
■「The eyes of the wind / 風の目たち VoL.1 A」in ジョージア・トビリシ)
出品作家:yang02、水戸部七絵、小松千倫、太田琢人、細井美裕、竹久直樹、敷地理、河野未彩、青柳菜摘、藤生恭平、志賀耕太、前場穂子、新井浩太、柿坪 満実子、立石従寛、時吉あきな、小林絵里佳、星拳五、庄司朝美、田沼利規
Photography Sopho Kobidze、吉田山、田沼利規、笠原名々子
「The eyes of the wind / 風の目たち VoL.1 B」in 東京・原宿
「風の目たち/The eyes of the wind Vol.1B」
place:BLOCK HOUSE
producer:Yoshidayamar
Ana Kezeli、Elene Gabrichidze、Francesca Crotti、Mariam Kalandadze、Nino Sakandelidze、Ninutsa Shatberashvili、Nutsa Esebua、Rebekka Ana Aimée Stuhlemer、Sandro Sulaberidze、Sopho Kobidze
photo:Takuto Ohta
「The eyes of the wind / 風の目たち VoL.2 A」トルコ・イスタンブール
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